2018年 02月 13日
お見合い?
「国家試験の勉強は順調なのか?」
「・・・」
「おいおい、大丈夫か?」
「国家試験落ちたら私たちはどうなるんですか?」
「どうなるって、単なる女子だろ」
「え〜!、単なる女子って」
「単なる女子は女子、それ以上でも以下でもないの」
「やだ〜、死んじゃう!」
「そんなんで死なねーし」
「え〜だって死んじゃうかもしんないじゃん」
「だったら頑張るしかないだろ」
「そうだけどぉ・・・」
「こっちが協力出来るのはこの時間だけだから、後は自分で頑張るしかないだろ」
「そうなんですけどぉ」
「そうだろ?、個別に教えるったって1対30だったら無理なんだからさ、あとは個人で頑張ってね」
「は〜い」
「じゃぁ今日はここまで」
「起立!、礼!、ありがとうございました!」
「健闘を祈るわ!」

本当に大丈夫なのだろうかと思いながら、こちらがやれることは全てやったからあとは本人次第ってことで鼻歌交じりに教員控え室のドアを開けるとそこでは職員さん達が何やら密談中の様だった。

「何のお話ですか?」
「あ、これちょっと見て下さい。この人結構イケメンですよね」

そう言いながら見せてくれたのは、世の中的に「お見合い写真」って感じの装丁をした写真だった。

「誰ですか?、結構良い感じのイケメンですね」
「出入りの広告代理店の人からの紹介なんですけどね、今流行りの通信事業関連企業に勤めてる人なんですって」
「へー、通信事業関連企業ですか。結構稼いでるんですかね(笑)」
「どうでしょうね、私が若かったら立候補してたわ」
「え?、立候補って?、マジお見合い写真なんですか?」
「そうですよ、ほらうちは若い子が結構いるでしょ?。」
「確かにそうですね、沢山居ますね」

若い子で独身と言えばあの人も独身だ。
いつ結婚しても何らおかしくない年齢だ。

「それでね、ゆり子先生にどうかなと思って今みんなで見てたんですよ」
「てことはまだゆり子先生はこの写真を見てないんですか?」
「えぇ今さっき営業の人が持ってきたんで、まだ見てないですね。」

写真をちらっと見るに悔しいかなイケメンには間違いない。
少なくとも限りなく初老に近いおっさんと比べれば、10人が10人写真の男性を選ぶってレベルと言ったらその写真の男性に失礼に当たるくらいに男から見ても外見が良い男であることは間違いない。
それに通信事業関連企業にお勤めとあれば将来はどうか判らないが、今時点で言えばそれなりの稼ぎであることは想像に難しくない。
でもなぜそんなイケメンが見合い?
今時見合いなんて流行らないだろうとは思うのだが、そこを敢えて逆に行くのか?

ただなんだかんだ言っても、恋愛と結婚は違う。
結婚は持久戦だ。
そうなればある程度の財力がなければやっていけない時も出てくる。
恋愛関係にある男女であれば、それぞれが仕事に就き、それぞれの収入をもって生活を成立することになるが、こと結婚となれば最初のうちはそれと同じ形態を維持出来るだろうが、中には子供が生まれて一時的にも彼女が就労に付けない状況にもなる家庭もあるだろう。
そうなった時には男の稼ぎのみで生活を維持しなければならない期間が厭が応にも生じてしまう。
その時に頼りになるのが男の稼ぎだ。
ぶっちゃけ手取り12万位で家族3人が暮らすには、今の世の中では辛すぎる。
嫌らしい言い方だが、金は幾らあっても邪魔になるものではない。
そういった面から言えば、写真の男性は10年後は判らないが、今は予選通過していると考えて良さそうだ。

「どう思います?」
「どう思いますって、えーっと良いと思います。写真からは誠実そうな感じに見えますね」
それ以外の答え方があれば誰か教えて欲しい。

「ですよね、じゃぁ後で見せてみようっと」
なんだその事務長の嬉々とした顔は、まるで自分のことみたいじゃないか、と思いながらも世の中的にはこれは当たり前のことなんだろうなと自分に言い聞かせる。

出された珈琲を飲みながら脳内にはマイケルナイマンのピアノ曲「楽しみを希う(こいねがう)心」がリフレインしていた。



にしても「希う」って「切に望む」って意味らしいけど、曲調は正反対な感じだ。
誰だよこんな邦題を付けたのは。


講義を終えたゆり子が事務室に戻ってきたのを見つけた他の職員が駆け寄り何やら話をしている。
「えー、そうなんですか?」
ゆり子は驚いた様な声を上げると他の職員が口々に
「そうよ、見たら判るって」
「絶対気に入るって」
「あ〜あ、私なら何を差し置いても立候補するんだけどなぁ」
「あれ?彼氏いなかったっけ?」
「でもあっちの方が将来性ありそうだしぃ」
「ちゃっかりしてるわね」
職員の盛り上がり方は尋常じゃない、ゆり子を除いては。

「あ、先生お疲れ様です」
「お疲れ様でした。そういや事務長が先生に何か見せたがってましたよ」
「もしかしてどなたかの写真ですか?」
「うん、そうみたいですね」

平静を装って振る舞うが、言葉の端々がうわずっていたのが自分でも判った。


「ゆり子先生、ちょっとちょっと、こっちに来て」
「はい、何でしょう?」

事務長は嬉々として写真を持ち出してきた。


つづく


by Wonderfullifewith | 2018-02-13 22:09 | うちのこと | Comments(0)


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